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イベントフィルター

個々のクリップを選択したり、タイムルーラをドラッグしてクリップの一部を選択すると自動的にそれらの時間範囲内のイベントがすべて選択されますが、ときには選択されたイベントに対する操作を、より細かく行う必要がある場合があります。次にそのような場合の例をあげます。

1オクターブの範囲内にあるノートイベントを選択し、別のトラックに抜き出してコピーする

ある値以下のベロシティを持つノートイベントを選択し、それらのベロシティを増幅させる

トラックにある最初のパッチチェンジイベントを探す

各小節の3拍目にあるノートすべてを選択してそのデュレーションを変更する

イベントフィルター・ダイアログの項目は以下のとおりです。

イベントフィルター - 検索ダイアログ

A：チェックしてこの種類のイベントを含める  B：選択するイベントの値の範囲を入力する

種類の異なるイベントは、次のようにそれぞれ異なるパラメーターを持っています。

イベントの種類	含まれるパラメーター
ノート	ピッチ、ベロシティ、デュレーション
キーアフタータッチ	ピッチ、プレッシャー値
コントローラ	コントローラナンバー、値
RPN/NRPN	パラメーターナンバー、パラメーター値
パッチチェンジ	バンクナンバー、パッチナンバー
チャンネルアフタータッチ	プレッシャー値
ピッチベンド	値

イベントフィルターは、特定の値の範囲に合ったイベントのみを受け付けます。これはノートイベントであればピッチの範囲、ベロシティの範囲、デュレーションの範囲がその対象となることを意味します。またイベントフィルターは、チャンネル番号や、拍とティックなどで限定された範囲にあるイベントを選択するために使用することもできます。

イベントフィルター使用時には、設定された条件を満たすイベントを選択するか、逆に条件を満たすイベント以外のイベントを選択するかのどちらを動作をするかを決めることができます。設定された範囲内のイベントを選択する場合には、除外のチェックをオフにしておき、逆に範囲外のイベントを選択する場合には除外のチェックをオンにします。

イベントフィルターを使用して、特別なイベントの種類（オーディオ、システムエクスクルーシブイベント、歌詞、MCIコマンド、エンベロープシェードなど）を特定することもできます。

すべてボタンとなしボタンは次のように動作します。

ボタン	目的
すべて	クリックするとすべてのイベントを含むように、イベントフィルターの各チェックボックスをオンにします。この後、検索対象とするイベントの値の範囲を狭くするために各項目を修正することができます。検索対象から除外するイベントは各イベントの項目欄をオフにしてください。
なし	クリックするとどのイベントも検索対象としないように、イベントフィルターの各チェックボックスをオフにします。検索対象とするイベントはチェックをオンにするとともに、対象となる値の範囲を設定して使用します。

イベントフィルターの中でピッチの文字列を入力する箇所では、MIDIキーボードの鍵盤を押すことで、項目に設定するピッチを指定することができます。またピッチを入力する箇所では、オクターブ番号の代わりに疑問符（?）を使うことができます。これは、オクターブ・ワイルドカードと呼ばれるもので、オクターブに関係なく該当するすべてのピッチという意味です。たとえば、ピッチC?はすべてのオクターブのCを指します。この場合、最小、最大の内、最小のみが使われ、最大は設定しても無視されます。

イベントを選択する

編集｜選択｜フィルターで選択コマンドを使用すると、最初の選択にイベントフィルターが適用されて選択範囲が更新されます。このコマンドを何度か使用することで、さらに細かく選択範囲を更新していくことができます。このコマンドを使用する前に、他の選択コマンドや選択ツールを使用して、最初のイベント選択の状態を作っておくと良いでしょう。現在のビューで編集｜選択｜すべてを選択 コマンドを使用すると、ビュー内のすべてのイベントが選択されます。

トラックビューでは、それぞれの選択されたイベントを表示することはできません。このため編集｜選択｜フィルターで選択コマンドを使用しても、トラックビューの表示は変更されません。つまりSONARがイベントフィルターの効果を適用しても、視覚的な変化はありません。またいずれかの方法（たとえばトラック番号をクリックしたり、タイムルーラをクリックしたりする方法）で選択状態を変更すると、イベントフィルターによる選択の効果が取り消されます。このような場合にはもう一度編集｜選択｜フィルターで選択コマンドを使用し、イベントフィルター - 選択ダイアログで各フィルターの値を設定した後OKをクリックして再選択する必要があります。

メモ：トラックビューでは、クリップ内のイベントの選択状態によって表示が異なります。クリップ内のイベントがすべて選択されている場合には、クリップは完全な黒色で表示され、クリップ内の一部の選択範囲内のイベントがすべて選択されている場合には、その部分が濃いグレーで表示されます。選択されたイベント間に選択されていないイベントがあるような場合には、選択された部分が薄いグレーで表示されます。

イベントフィルターを使ったイベントの検索方法

1.	最初に、初期の検索候補となるトラック、クリップ、イベントを選択します。

2.	メニューから編集｜選択｜フィルターで選択コマンドを選択し、イベントフィルター - 選択ダイアログを表示します。

3.	検索するイベントに合わせてイベントフィルターの各項目を設定します。

4.	OKをクリックします。

検索候補のイベントの中から、イベントフィルターの条件に合わないイベントが振るい落とされ、残ったイベントだけが引き続き選択状態となります。

例：右手/左手のパートを別のトラックに分割する

両手で弾いた電子ピアノの演奏がトラック1に録音されており、これを右手と左手のパートとして、それぞれ別のトラックに分割するとします。このとき、もし右手で演奏された音符がすべてC4よりも高ければ、C4～C9のノートイベントをすべて切り取って他のトラックへ移動すれば、右手と左手の演奏を容易に分割することができます。この方法でトラックを分割する方法は以下のとおりです。

1.	トラックビューでトラック1のトラック番号をクリックし、トラック1全体を選択します。

2.	メニューから編集｜選択｜フィルターで選択コマンドを選択し、イベントフィルター - 選択ダイアログを表示します。

3.	なしボタンをクリックし、ダイアログ内のチェックボックスをすべてオフにします。

4.	ノートのチェックボックスをオンにし、ピッチの最小欄の値にC4を入力します。このとき最大欄の値は初期状態のC10のままにしておきます。

5.	OKをクリックします。

6.	メニューから編集｜切り取りコマンドを使用して選択されているノートイベントをクリップボードに切り取ります。

7.	メニューから編集｜貼り付けコマンドを使用して、別のトラックに切り取ったノートイベントを貼り付けます。

プロセス｜置換

プロセス｜置換コマンドを使用すると、イベントのデータパラメーターを自由に操作できます。このコマンドは、ワープロの検索置換機能に似ていますが、単純な置換というより、むしろ音に対する独自の加工機能を持った置換といえます。

置換コマンドでは、2つのイベントフィルターを使用します。1番目のイベントフィルターには、検索コマンドを使用するときと同じ検索基準を指定します。2番目のイベントフィルターは、特定の範囲（最小と最大の間）で検索したイベントを加工、置換するのに使います。検索されたイベントは、検索範囲内あるいは置換範囲内の条件に従って加工されます。独立したコマンドのあるトランスポーズや、反転、調号の変更などの操作も、このコマンドで行えます。

2番目のイベントフィルター - 置換ダイアログでは、チェックボックスと拍、ティックの値の範囲については無視され、選択されたイベントタイプの、置換を行う値の範囲だけが使用されます。

プロセス｜置換コマンドでは、2番目のイベントフィルターのオクターブ番号のワイルドカードが「元のノートを元のオクターブの別のノートに置換する」と解釈されます。検索と置換の両方のイベントフィルターにオクターブのワイルドカードを使用すると、たとえば、すべてのEフラットをEナチュラルに置き換え、各ノートのオクターブを保持することができます。

たとえば、オクターブ・ワイルドカードをイベントフィルター - 検索ダイアログとイベントフィルター - 置換ダイアログの両方で使用すると、EbをすべてEに変更しても、オクターブは元のまま保持するといった編集ができます。次に、これらの機能の利用例をいくつか紹介します。これらの例は、加工するイベントの種類としてノートイベントを使用していますが、他にもあらゆる種類のイベントを使うことができます。

 

パラメーター	検索	置換の範囲	効果
ピッチ（キー）	C2～C4	C4～C6	検索範囲にあるすべてのノートイベントのピッチが2オクターブ上にトランスポーズされます。
ピッチ	E2～C2	Eb2～Eb2	オクターブ2の高さにあるEのノートイベントのピッチが、すべてEb2に変換されます。
ピッチ	E?～E?	Eb?～Eb?	すべての音域にあるEのノートイベントのピッチが、すべてそれぞれ元のオクターブのEbに変換されます。
ピッチ	E?～E?	E?～Eb5	すべての音域にあるEのノートイベントのピッチが、すべてオクターブ5の高さのEbに変換されます。
ピッチ	C1～C8	C8～C1	検索範囲にあるすべてのノートイベントのピッチが、反転します。
ベロシティ	0～127	80～127	ベロシティの値が狭い範囲に圧縮されます。
ベロシティ	0～127	127～0	ベロシティの値が反転します（弱い音は強く、強い音は弱くなります）。
デュレーション	0:01:00～0:02:000	0:01:000～0:01:000	4分音符と2分音符の間の長さのノートイベントが、すべて4分音符の長さに変換されます。
チャンネル	1～1	2～2	チャンネル1のすべてのイベントがチャンネル2に変更されます。
チャンネル	1～16	4～4	すべてのチャンネルのイベントがチャンネル4に変更されます。