この項目では分解能、つまり基準となるグリッドのサイズを指定します。分解能には全音符から3連32分音符までのいずれかの音符を指定でき、また分解能をティックで指定することもできます。基本的には、クォンタイズする範囲内にある最小の音符と一致する分解能を選択します。たとえば、16分音符ばかりで構成されている場合は、16分音符を分解能として指定し、16分音符と8分音符で構成されている場合も、16分音符を指定します。タイムベースの初期値は960 TPQNとなっており、この場合には960 ティックが4分音符に相当します。
グルーブクォンタイズは、グルーブパターンに合わせてグリッドを作成し、選択したトラック内の音符を移動させてそのグリッド上に配置します。分解能は、グルーブパターン上にどれぐらいの間隔でグリッドを作成するかを指定します。SONARは、参照する基準データ(グルーブファイルまたはクリップボード)内のイベントに対し、分解能で指定した間隔でグリッドを作成します。たとえば、基準データ内の4分音符に同期させて、それより細かい16分音符を並べたいとします。分解能に16分音符を指定すると、SONARは、基準データの4分音符間に16分音符間隔のグリッドを作成し、そのグリッドに合わせて音符を並べます。また、この機能を使用すると、他のトラックが演奏している間、無音になる範囲があっても補正することができます。
グルーブクォンタイズの場合には、音符の長さはグルーブパターン内のサンプルと比較して調整されます。デュレーションに関する情報がない場合は、その音符の終わりに最も近いグルーブパターンの始点までの長さが使用されます。
ベロシティの調節は、グルーブクォンタイズの場合のみ使用可能で、グルーブクォンタイズの対象となるノートイベントのベロシティを、グルーブパターンまたはクリップボードのベロシティに調整します。
ミュージシャンをふくめ、人間の耳は「不完全」であることで心地よさを感じます。クォンタイズを使うと音符が完全な位置に移動され、その結果曲が機械的な感じになったり、堅いものになったりします。これを防ぐために強さというパラメーターでクォンタイズのかかり具合を調節することができるようになっています。強さを100パーセントに設定した際には、すべてのノートイベントが完璧なタイミングに移動し、50パーセントに設定した場合にはタイミングのずれた音符が完璧なタイミングとの間の半分の位置に移動します。これによってずれたタイミングのノートイベントを、完璧な位置に完全にではなく、ある程度近づけるといったような調節ができます。
また、グルーブクォンタイズを使用する場合には、ノートイベントの長さとベロシティの調整に対しても強さの設定をすることができます。クォンタイズの強さを設定してトラックのリズミカルな感じを出すためには、ノートイベントの始点タイムが、デュレーションよりも重要な要素となります。このために、始点タイム(強さ:タイムを100パーセントに設定)を変更するほうが、デュレーション(強さ:デュレーションを100パーセントに設定)を変更するよりもよい効果を得ることができます。しかし、予期せぬ休符が発生したり、音が重なり合ったりした場合には、このような状況を防ぐために、タイムとデュレーション両方のパラメーターを変更します。
曲の一部にクォンタイズを実行する場合に、グリッドから遠く離れた音符は移動させたくない場合があります。ウィンドウ(もしくは
ウィンドウのセンシティビティ)の項目では、グリッドポイントにどの程度近い音符だけを移動するかを指定することができます。
グルーブクォンタイズを使用するときには、各グリッドに設定したウィンドウの外側にある音符についての動作を、次の4つのオプションから選ぶことができます。
クォンタイズコマンドに影響されるイベントの種類を、ノート、歌詞、オーディオのみに制限する事もできます。このオプションが指定されているときは、コントローラなどのデータはクォンタイズされません。
選択したMIDIイベントとオーディオクリップにグルーブクォンタイズが適用されます。もし変更をを取り消す場合は、編集メニューの元に戻すコマンドを実行し、クォンタイズを適用したイベントを元の状態に復帰できます。設定を保存した場合には、その設定をパターンに反映することができます。パターンを選択し、
プリセットフィールドからプリセットを指定します。一連の設定を削除するには、
プリセットフィールドから該当するグループを選択し、
削除ボタンをクリックします。
テンポのずれたトラックを正しく合わせる:ずれを修正するための基準となるトラックデータを選んでクリップボードにコピーします。テンポのずれたトラックの修正する部分を選択します。
プロセス > グルーブクォンタイズを選択して、グルーブライブラリファイルに<クリップボード>を選択し、
OKをクリックします。
各小節にアクセントをつける:アクセントを付けたいポイントにノートイベントを置いた、サンプル小節を作成します。アクセントを付ける拍の音符のベロシティを他の拍の音符よりも大きくします。その小節を選択してクリップボードにコピーし、アクセントをつけたいトラックまたはクリップを選択します。
プロセス > グルーブクォンタイズを選択してグルーブクォンタイズダイアログを表示します。ベロシティには0%以外の値を指定します。OKをクリックすると、選択した編集範囲のノートイベントのベロシティが、サンプル小節の各拍で指定したベロシティに応じたレベルに調節されます。
フィーリングをコピーする:作曲した後、機械的なタイミングで入力しただけの、無味乾燥な曲があり、そこに、リズミカルでダイナミックなオフビートのベースラインが録音できたので、他のトラックもそのフィーリングに合わせたいとします。この場合は、まずベーストラックをクリップボードにコピーします。そして、ベーストラック以外のトラックを選択した後、プロセス > グルーブクォンタイズを選択し、
グルーブクォンタイズダイアログのグルーブファイルとして<クリップボード>を選択します。そして、ベースノートのデュレーションにだいたい合った分解能の値を選択して、センシティビティを100%に指定します。SONARは、メロディーの各ノートイベントを最も近いベースノートのタイミングに合わせます。また、強さのタイムを使用すると、タイミングを揃える正確さを調節できます。この場合、比率が高いほど正確にタイミングの揃った曲になります。
リズムトラックとソロトラックを同期させる:各トラックごとのリズムは残したいが、タイミングは同期させたいという場合、分解能に大きな値を、センシティビティに小さな値を設定してみてください。たとえば、特殊なビートスタイルのドラムトラックと、いいフレーズの入ったソロを含むトラックがあるとします。そして、ドラムビートは主に4分音符だが、ソロは3連16分音符に近いような短い音符で構成されているとします。このような場合、ドラムトラックをクリップボードにコピーし、分解能を4分音符に指定して、ウィンドウのセンシティビティに10%程度の小さな値を、ウィンドウ外の場合の項に、変更しないか分解能にクォンタイズ、または比例配分を選択します。このようにして実行すると、ソロの音符は4分音符のドラムビートの近くに合わされますが、その間の短い音符の、速いパッセージではソロのフィーリングが残ります。
テンポのずれたトラックを修正する:リズムとメロディーのトラックを録音したが、メロディーの演奏のテンポがずれているとします。分解能を全音符に、ウィンドウを25%以下に指定し、ウィンドウ外の場合で比例配分を選択して
グルーブクォンタイズを実行すると、各小節内の音符の相対的なタイミングは維持されたまま、タイミングは、小節の区切りで同期します。
タイミングのずれたフレーズを修正する:正しいフレーズをクリップボードにコピーします。そして、タイミングのずれたフレーズだけが対象となるように選択範囲を変更します。クリップボードのデータをグルーブソースに使用してグルーブクォンタイズを実行すると、2つのフレーズのリズムが一致します。